内定辞退した外国人留学生の気持ち

こんにちは! 留学生就職支援のASIA Linkです。

弊社は外国人留学生を専門に、日本企業に留学生を紹介するといった職業紹介事業を行っております。

求人募集に留学生がエントリーをしてから内定を得るまで、弊社は伴走していくのですが、昨今の売り手市場も影響してか、複数社の内定を得られる留学生も増加傾向にあり、それに伴い「内定辞退」も増えつつあります。

職業紹介(人材紹介)の会社にとって、内定辞退というのは避けられないものではありますが、とても苦しいものでもあります。

内定辞退を防ぐ方法、解決策はないのかもしれません。ただ、外国人留学生がどんな理由、どんな気持ちで内定を辞退したのかは探ることができるだろう、ということで、25卒の留学生に昨秋オンラインでインタビューを行いました。

一例として、日本の日本語学校、大学、大学院を経て、日本企業に就職されたベトナム人のAさんが語ってくれたことをみなさんにシェアできればと思います。


ベトナム人留学生Aさんへのインタビュー

Q:Aさんが日本の就職活動に抱いていたイメージはどんなものですか。

日本の就職活動は時間がかかるとは聞いていましたが、実際に長かったです。会社説明会があって、面接も3回ぐらいあり、しっかりチェックされていると感じました。

Q:就職活動では不合格になることもあったと思いますが、どのように対処していましたか。

選考に落ちるとメンタルをキープするのが大変でした。だから、「失敗しても次の会社がある」と考えて、10分ぐらいで気持ちを切り替えるようにしていました。周りの友人には、一次面接に落ちて就活をあきらめてしまう人もいたので、精神力が大事だと思っていました。

Q:日本で就職すると決めたのはいつ頃だったんですか。

大学3年生のとき、ちょうど2020年のコロナ禍の頃でしたが、日本で就職しようと決めました。自分の日本語能力を活かしていきたいし、日本は環境がいい。空気がきれいです。

海外で働いていた知り合いから「日系企業で働けたらどこでも働ける。日本企業はしっかりトレーニングしてくれるよ」と聞いたことがありました。日本企業での勤務経験が評価されると知っていたので、自分のキャリアにおいてもプラスになるだろうと考えていました。

Q:リクナビやマイナビといった求人広告や、ASIA Linkのようなエージェント(職業紹介)を利用して就職活動を進めたんですか。

一番活用したのは、大学のキャリアセンターです。キャリアセンターが紹介してくれる会社は自分の大学のことを知ってくれているので、選考が進みやすいとも感じました。それは選考だけでなく、インターンシップも同じでした。

Q:合計で何社ぐらいに応募したんですか。

10社応募して5社から内定をもらいました。キャリアセンターとASIA Linkから紹介してもらった企業を中心に進めていきました。

Q:内定承諾の決め手は何でしたか。

入社を決めた会社は、大学の先生からベトナムに進出している企業だと事前に教えてもらっていました。学内の会社説明会に参加して、そこでつながりができたことは大きかったと思います。自分の修士論文のテーマと会社の事業内容に共通点があったことも、影響したと思います。

それと、人事部長が「来てください!」と何度も言ってくれました。何度も面談の機会を設けてくれて、何でも相談することができました。給与から在留資格、仕事の細かいところまで話すことができたので、信頼関係を作れたし、自分に対して情熱をもって接してくれていることがわかりました。

何度もコンタクトを取っているので、入社後にショックを感じることもないだろうな、という安心感もありました。ご縁もあると感じました。

Q:Aさんは複数の会社から内定を得られましたが、内定を辞退した会社とその理由について教えていただけませんか。

内定をもらった会社ごとにメリット・デメリットを書き出して、知り合いやキャリアセンターの職員の方に相談をしました。内定を辞退した理由はいろいろあります。

ある大企業は最終面接後の合格の通知が遅くて2週間ぐらい待ちました。それで「動きが遅い会社だな」という印象になってしまった。ほかに「外国人としてリーダーになって多様性をもたらしてほしい」とも言われたのですが、入社後に具体的に何をするのか、わかりませんでした。「ぜひ、来てください!」と求められている雰囲気もあまりないように感じました。

日本の企業はしっかりしているので、自分が頑張ればキャリア形成はできると思います。入社してから数年後にどんなキャリアになるのかが、徐々にわかってくる。ただ、それだと時間がかかってしまうな、という不安がありました。

Q:内定を辞退した企業がいくつかありますが、何があったら内定承諾をしたと思いますか。

「この会社で○○をやってほしい」「ここで貢献して活躍してほしい」という具体的な話をしてもらえたら、違ったかなと思います。当然、貢献できるようになるまで時間がかかることはわかっています。日本企業は新卒に対して、さまざまなことを求めますが、自分は大学院にも行って、学部生より年を取っているので、あらかじめ情報がほしかった、というのはあります。

Q:日本での就職活動を振り返っていかがでしたか。

就活はつらくはなかったと思います。友達や先生、ASIA Linkもそうですが、自分の人脈やリソースを使って就職活動を前向きに進められたと思いますね。どの面接も選考も、いい経験になったと思います。


ベトナム人留学生のAさんは、一時間のインタビュー中、常ににこやかに自身の就職活動について、かなり詳細に話をしてくださいました。

このインタビューから感じたことは、ベトナム人留学生のAさんは、選考中に「入社後に自分が何をするのか」「会社が自分に何を求めているのか」を見極めようとしていたのだな、ということです。自分の長期的なキャリア形成を見据えて、ファーストキャリアが最良の選択になるよう、面接を通じて探り続け、決断をされたのだな、という印象です。

その一方で「ご縁」という言葉も出てきており、入社を決めた企業とコンタクトを取った回数の多さ、その企業の印象が最初から最後まで良かったことも、大きな要因になったように見受けられます。

Aさんが入社された企業は、新卒のAさんに対して、かなりのリソースを割いて対応をされており、やはり、言葉だけでなく行動で示すことで「選ばれる企業」になるのだと改めて思いました。

今後も、弊社では外国人留学生が日本企業に何を求めているのかをリサーチを重ねていきたいと考えております。また、そこから日本企業がどのように外国人留学生の人材にアプローチしていけばいいのかの一案を提言できたらと思っております。