「人の役に立つ仕事とは何か?」を教えてくれた恩師の言葉を、今日かみしめている

こんにちは。ASIA Linkの小野です。

今日、恩師とのお別れに行ってきました。

私は大学時代、国立音楽大学で「音楽学」という学問を学んでいました。
子どものころからピアノを弾いていて音楽が好きではありましたが、練習は嫌い。クラシック音楽にもそこまで興味はなく、ふつうにJ-POPに夢中でした。
なぜ音大に進んだかというと、音楽という存在を学際的に(様々な学問からのアプローチで)研究する「音楽学」という学問があることを知り、興味をそそられたからです。

とはいえ、音大に入ってみると、いわゆる西洋のクラシック音楽がそこらじゅうにあふれていました。
「まちがえたな」
と思いました。

ただ、私が入った「音楽学」という学科には、救いがありました。
西洋音楽だけが「音楽」ではない。世界中に「音楽」があり、そのすべてが研究対象になりうる、という考え方が根底にあったのです。
そして、選択科目の中に、「三味線」がありました。
それが恩師との出会いでした。

「三味線」の授業を担当していたのは、(当時の私はそのすごさをあまり理解していませんでしたが)長唄の世界ではとても有名な演奏家であり、作曲家でもある、今藤政太郎先生でした。
初めて触れた長唄の世界は新鮮で、三味線が上達していくのも楽しく、大学の4年間、毎週の授業が本当に楽しかった。
政太郎先生の演奏会も、みんなでよく聞きに行きました。
先生も一緒に、みんなでよくごはんも食べました。

一方、卒業が近づくにつれて、私は自分が生きていく方向性がわからなくなっていました。
私の両親は、心理学者と医療関係者で、人の命や病に向き合う仕事をしていました。
両親からの「人の役に立つ仕事をしてほしい」という無言のプレッシャーを、私は勝手に背負い込んでいきました。

「音楽は人の役に立つのか?」
「音楽は人の命を救ったり病を治したりできるのか?」
「人は音楽がなくても生きていけるのでは?」

卒業するころの私は、やりたい仕事もない、目標もない、当然ながら就職活動もしていないという、もうフリーターかニートになるしかないような状況になっていました。

あるとき、この気持ちを政太郎先生に話したことがありました。
すると先生から、こんな言葉が返ってきました。

たしかに、音楽は病気を治したり、命を救ったりできないかもしれない。
でも、人はただ長く生きることだけが幸せだろうか。
音楽は、その生きる時間を、楽しくしてくれたり、悲しみをいやしてくれたり、心を豊にしてくれたりする。
だから音楽も、ちゃんと人の役に立っていると思うよ。

この言葉は、30年たった今も、私の心の中で大切に響き続けています。
卒業後は、数年間音楽関係の仕事をしたのち、私は日本語教師の道に進み、そしてASIA Linkを創業するに至るのですが、その間私をずっと支えていたのは、「人の役に立つ仕事とはなにか?」という私自身への問いです。

留学生との就職相談を行う中でも、この問いを留学生と一緒に考えることもよくあります。
「人の役に立つ仕事がしたい」
「社会貢献できる仕事がしたい」
と言う留学生に対して、
「人の役に立つ、社会に貢献するって、なんだろう?」
と問いかけて一緒に考えます。
すると、たいていの仕事は人の役に立っているし、社会貢献をしていると気づかされます。

「この人の役に立ちたい」と思えたら、もうそこに答えはあるのだろうと思います。

そして、人のためとか、社会のためとか考えなくても、何かに夢中で取り組んだら、自分の知らないところでだれかの役に立っているかもしれません。

帰りの地下鉄でも中央線でも、ボロボロ泣き続けながら、恩師の言葉をかみしめていた今日の夜でした。