【外国人留学生の本音】日本の就職活動は大変だが、自分の成長を確実に感じる毎日です

<東京外国語大学大学院2年・中国・女性・Sさん>
日本の就職活動は母国より遥かに大変だと思います。
書類選考から面接まで、いくつもの難関を通過しなければなりません。そして、落ちたらその前の努力が「ゼロ」になります。また書類選考からのスタートです。本当に残酷な競争だと思います。
でも、面白いです。

一歩一歩が、まるでゲームの通関みたいなプロセスだと思います。「書類選考を通過した!よし!次に行こう!」みたいな気持ちで、毎日わくわくしています。つらいことももちろんいっぱいありますが、いい結果を頂くときのうれしさも、大きいだろうと思います。
3月から就職活動を始めて今日まで、まだまだいい結果の兆しが見えないですが、自分の成長を確実に感じる毎日です。


★ASIA Link小野から一言

日本の新卒の就職活動は、いつから今のような形になったのでしょうか。
就活の「解禁日」に一斉に就活を始め、いくつもの企業にエントリーして、説明会へ足を運び、何枚ものエントリーシートを書き、真っ黒なリクルートスーツに身を固めて面接に挑む。
面接だけではなく、適性テストの準備もしたり、グループディスカッション選考にも備えてノウハウを学ぶセミナーにも参加。
このような就活をしながら、大学の授業や卒論、生活費を稼ぐためのアルバイトもこなさなければなりません。

もちろん、日本以上に新卒の就職が過酷な国はいくらでもありますし、逆に世界的に見ても、まったく職務経験のない「新卒」がこれほどの確率で正社員採用される国はめずらしいかもしれません。

そうは言っても、外国人留学生にとって、「外国」である日本での初めての就職活動は、とまどいや不安がとても大きいものです。
張り切って就職活動を始めたものの、説明会にも出てエントリーシートも提出し、いざ面接に呼ばれたところで、「うちは外国人の採用は考えていない」と面接官に言われ、それならもっと早く教えてほしかったと感じる留学生も少なくありません。
また、採用選考の筆記試験で、日本人にしかわからないような一般常識が設問に出て、「ああ、この企業は外国人社員に入って欲しいとは思っていないのだろう」と感じて辞退してしまう留学生もいます。

このような就活を続けていくうちに、いわゆる「お祈りメール(不合格通知)」が来ると、「自分は外国人だから落とされたのではないだろうか」と疑心暗鬼になり、就活そのものを辞めてしまう留学生もいます。

しかし、このような状況の中でも、最後まであきらめずに果敢に就職活動を進めていく留学生を多く見てきました。
挫折しても、気持ちをふるい立たせて、さらに自分自身を高めていこうとする彼らを見ていると、就職活動は、仕事をする上での大切な「力」を身に着ける過程であると感じます。
日本人学生も、就活の過程で「自分にとって働くとは、仕事とは何なのか?」「自分は何のために、誰のために働きたいのか?」という自らの価値観、アイデンティティと向き合っていきます。
留学生にとっては、さらに「自分はなぜ日本で働くのか?」「日本社会にとって自分はどのような存在なのか?どのような存在になりたいのか?」という問いにも向き合うことになります。

留学生のSさんは、このような問いへの答えを求めながら、苦しみながらも、自分自身が確実に変化していることを感じています。
その変化を、楽しんでいます。
まるでゲームを攻略していくかのように。

内定を取ることを「ゴール」ではなく「スタート」にするためにも、就職活動の過程で自分に向き合い、自分の中の壁を越えていくプロセスは大事にしてほしいと思います。私はこのプロセスを邪魔したくないと思っています。これは、留学生の就職支援の仕事をしないとか、求人を紹介しないとかいう意味ではなく、手を出しすぎないという意味です。彼らが存分に悩み、自分の気持ちを引き出せるように、そのプロセスにはいくらでも手を貸します。
それは、この先就職してからも、どこで生きていくにしても、必要な力を生み出すと思うからです。

採用する企業も、そして支援する側の私たちASIA Linkも、彼らのそのようなプロセスを見守り、応援する気持ちで、真摯にこの成長を見届けていきたいと思います。