第5回「教職員のための外国人留学生就職支援研修会」レポート

1.はじめに

外国人留学生の日本での就職を支援するために、「教員」「キャリアセンター等の学校職員」「留学生を雇用している企業」「就職支援企業」の4者の情報や知見の共有を目的とする当研修会。
2017年11月に第1回を開催し、今回で5回目を迎えました。

最初の3回は国士舘大学の教室をお借りして実施していましたが、前回(第4回)からは新型コロナの感染防止のためオンライン(Zoom)での開催です。

今回は、かねてより取り上げたいと考えていたテーマである、留学生就職の「自分視点」と「企業視点」の問題に焦点を当てて、全体のプログラムを構成しました。

以下、当日の内容をレポートとしてまとめました。
留学生の就職支援の一助となりましたら幸いです。

【実施概要】
日時:2022年7月09日(土)14:00~17:00
会場:WEB開催(Zoom使用)
テーマ:留学生の就職で考えるべき「自分視点」と「企業視点」
主催:株式会社ASIA Link

【参加者】
合計96名
*キャリアセンター等の学校職員 37名
(⇒大学33名、専門学校3名、日本語学校1名)
*教員 45名
(⇒大学21名、専門学校17名、日本語学校7名)
*その他の教育関係者 11名
(⇒フリーランス教師、その他機関所属、学生など)
*パネリスト 3名
(⇒外国人社員(元留学生)を雇用している企業関係者)


2.プログラム

①キーノートスピーチ(基調講演) 14:00~14:40
「留学生の就職における自分視点・企業視点とは?」(担当:ASIA Link小野)

②留学生の就活事例紹介 14:40~15:00
「自分視点と企業視点の問題から考える、留学生就活の成功事例・失敗事例」(担当:ASIA Link井上)

③パネルディスカッション 15:00~16:00
「雇用企業側から見た、留学生採用における企業視点とは?」
【パネリスト】
外国人社員(元留学生)を雇用している、企業の経営者・人事担当者

ー休憩ー

④パネリストへの質問タイム 16:10~16:25

⑤教育機関における、企業視点を持つための取り組み事例紹介 16:25~16:57
【パネリスト】
外国人留学生の就職支援、キャリア教育に関わっている教職員

⑥まとめ、次回予告 16:57~17:00

以下、順番に内容を掲載します。

 

 


3.キーノートスピーチ(基調講演)

担当:株式会社ASIA Link 小野朋江

私たちASIA Linkでは、日本での就職を希望する留学生と日々面談を行っています。彼らの多くは、「語学力を活かして活躍したい」とか、「専攻分野の知識を活かして活躍したい」という希望を持っています。しかし、「面接に落ち続けている。なぜうまくいかないのかわからない。」という相談も多いです。みなさんも、語学力も専攻分野の知識もある、就職活動もがんばっている留学生に対して、方向性は悪くないんだけれどもう一歩何かが足りないと感じることはありませんか?

留学生が就職活動を始めて、企業へエントリーをするときに考えるのは、「この企業は勉強してきたことが活かせそうだな」とか、「グローバル企業だから語学力が使えそう」など様々です。学生がこのような自分の希望をスタート地点として就活を始めるのは、とても自然なことだと思います。
ただ、このスタート地点は、「自分視点」つまり、自分にとっての利益・メリットからの出発なので、ここに「企業視点」が重なってこないと内定には至りません。
「企業視点」とは、つまり、企業が留学生を採用することによって得られる、利益・メリットです。

「自分視点」は留学生によって違いますし、「企業視点」も企業によって違います。
そのため、私たちは留学生に一つの正解を示すということはできません。
ただ、留学生が「企業視点」も持てるような働きかけをしていくことはできます。
たとえば、留学生との面談の中で、「あなたが働きたいのはなぜこの仕事なのか?」「なぜこの企業なのか?」「企業があなたを採用するメリットは何だろうか?」といった<問い⇔思考>を繰り返すうちに、留学生が自分視点に企業視点を重ねていき、内定へと至る過程を私たちは多く見てきました。
(もちろん、私たちが介入しなくても、留学生自身が就職活動の中でこの視点を持つようになり、内定を得ていくプロセスもよくあります。)

この「自分視点」「企業視点」の課題については、私たちもまだ日々試行錯誤しているのが現状ですが、今回の研修会のテーマにすることで、教職員・企業の方々と一緒に考えてみたいと思います。

「自分視点」「企業視点」とは、具体的にどのようなものなのか、ここで見ておきたいと思います。
まずは、留学生の「自分視点」を見ていきましょう。

上記のスライドにあげた項目は、ASIA Linkで日々留学生との就職面談を行う中で、実際に出てきた留学生からの視点です。
この「自分視点」を、大きく4つのカテゴリーに分類してみました。


分類したものがこのスライドです。
この4つのカテゴリーは、留学生に限らず、人が働く上で重要な自分視点だと思います。


次に、採用企業の「企業視点」を見てみましょう。
上記のスライドにあげた項目は、ASIA Linkで企業からのヒアリングを行う中で、実際に出てきた企業の視点です。
この「企業視点」も、大きく4つのカテゴリーに分類してみました。


分類したものがこのスライドです。
留学生を採用する企業の多くが、この4つのカテゴリーについて(比重の差こそあれ)、留学生が貢献してくれることを期待しています。そして実際に、すべてのカテゴリーが企業に利益・メリットをもたらす可能性があります。

冒頭の、「語学力を活かして活躍したい」「専門分野の知識を活かして活躍したい」という留学生を念頭に、いま見てきた「自分視点」「企業視点」を考えてみたいと思います。

留学生によく見られるこのようなニーズは、自分視点の4つのカテゴリーのすべてに関わってくる重要な自分視点だと思います。語学力や専門性を活かすことは、「自己能力の開発・成長」につながり、自分の強みを活かした活躍は「やりがい・自己実現」に直結します。そのようにして蓄積した実績は「戦略的なキャリア形成」にもなり、将来にわたる「生活・雇用の安定」をもたらす可能性があるわけです。

一方、この自分視点は、企業視点の4つのカテゴリーとも十分リンクする可能性があります。例えば、語学力が堪能な留学生は「外国人の強みを活かした活躍」が期待でき、専門性の高い留学生には「高い能力」を期待します。彼らは外国人社員として「多様性・イノベーション」を企業にもたらし、継続して活躍してくれることで「安定した労働力の確保」にもつながるわけです。

ただ、留学生が「語学力や専門分野の知識を活かして活躍したい」という自分視点だけにとどまっている場合、企業側は「たぶん活躍できるだろう」とは思うかもしれませんが、自社で活躍するイメージはまだぼんやりとしていてます。この状態で採用に踏み切るには、企業にとってリスクが大きすぎます。「たぶん」ではなく「きっと活躍できるだろう」という状態へ企業を後押しするためには、よりはっきりとしたイメージ、つまり「解像度」を上げることが必要です。
そして、この「解像度」を上げていくためには、留学生自身が「自分視点」と「企業視点」について考え、両者の接点・重なりを選考過程で企業に伝えていく必要があります。


ここからは、「自分視点」と「企業視点」に接点ができていくプロセス、そして重なりができるプロセスを、考えていきたいと思います。
私たちASIA Linkでは、留学生の就職支援を行う中で、このプロセスには3つの段階があると考えるようになりました。

まずは、この3つの段階のイメージを、上記の簡単な図を使ってご説明します。
左側は第一段階から第三段階までの留学生の変化を示しており、右側は、それにともなって、面接をする企業側の、留学生に対する解像度が上がっていく様子を示しています。

最初の【第一段階】は、あいまいな自分視点のみの段階です。
就職活動を始めたばかりの学生が、最初から自分視点を明確にして、強い就活軸を持ってスタートするということはあまりありません。そのため、自分視点はまだあいまいです。
企業視点については、まだ知らない・考えていない・思い至っていないことが多く、とりあえず「A社」の製品が好き、「B社」は母国に拠点があるから将来戻れるかも、「C社」は海外営業の募集だから海外出張に行けそう、だから受けてみたい、という段階です。自分視点と企業視点には距離があり、まだお互いが遠い存在です。面接に進んだとしても、企業側としてはこの留学生が自社で活躍するイメージはわかず、解像度が低いため採用には動きません。

次の【第二段階】は、「自分視点」「企業視点」が明確化し、接点ができる段階です。
第一段階ではあいまいだった自分視点が、就職活動の中でだんだん明確になっていきます。一方、企業にも「企業視点」がある、ということに気づき、考えるようになります。
そうすると、自分視点と企業視点に接点があるかどうか、考えようとする思考が生まれます。自分視点が企業視点に近づいていくイメージです。
ここで接点ができると、企業側の解像度も上がり、内定に近づきます。
ただ、ここはまだ接しているだけなので、企業の背中を押すためにもう一つ他の要素が必要です。
そして、その要素が加わると、この第二段階でも内定が決まっていきます。
この要素が何か、ということについては、のちほどご説明します。

最後の【第三段階】は、自分視点と企業視点が重なり「自分事」になる段階です。
企業視点の一部は自分視点に取り込まれ、自分のメリット=企業のメリットであるという、「自分事」として考える視点が生まれます。
企業側から見た「解像度」も鮮明になり、ここまでくると高い角度で内定が決まります。

この第一段階から第三段階を、具体的な例にあてはめて、もう少し詳しくご説明しましょう。


第一段階は、あいまいな自分視点のみの段階です。
たとえば、この留学生は、「中国語を活かして働きたい」という出発点にまだとどまっています。
この段階で面接を受けるとどうなるのか、あるキッチンメーカーでの例を見てみましょう。
この留学生は面接で、「中国語を活かして、御社で活躍したい」と伝えました。このような留学生に対して、企業側はこのように考えます。
「中国語を使って何がしたいのか?
なぜうちの会社でなければならないのか?
うちは確かに中国に製品を販売しているが、この学生は海外営業として活躍できるかわからないなあ。」
この段階では、「企業視点」がなく、「自分視点」もまだあいまいです。「自分視点」と「企業視点」の接点を考える気づきもまだ生まれていません。企業にとっては、自社で活躍できる人材としての解像度が低く、採用には至りません。

私たちが、これから就職活動を始める、または始めたばかりの留学生と面談をするとき、多くはこの第一段階です。
面談の中では、あいまいな自分視点をより明確化しながら、企業視点の知識も伝え、企業視点について気づきをうながすやりとりを行います。
3人の留学生との面談の例を、簡単にご紹介します。

まず一番上の留学生は、「中国語を活かしたいので、中国に製品を販売している会社で働きたい」という段階でした。私たちのほうからは、自分視点を明確化していくために、「中国語を活かして何をやりたいのか? 中国に販売する製品は何でもよいのか?」といった問いかけを重ね、留学生に考えてもらいます。
同時に、企業視点も知識として伝えることが多いです。この例では、留学生に「中国語を活かして何をやりたいのか?」と聞いたときに「通訳翻訳です」という答えが返ってきました。通訳翻訳業務への高い意欲や目的意識があって言っていたのではなく、語学力を使うなら通訳翻訳だろうという意味での発言でした。このようなケースでは、「中国に製品を販売している日本企業はたくさんあるが、留学生に通訳翻訳をしてほしいのではなく、留学生自身に中国向けの営業をやってほしいと期待している。」というように、企業が期待する役割を伝えるようにしています。

続いて、二人目の例です。
この留学生は「機械工学を勉強しているので、メーカーで機械系のエンジニアになりたい」という段階でした。理系学生のスタート地点としてとても多い事例です。
私たちのほうからは、自分視点を明確化していくために、「どんな製品を作りたいのか?どんなエンジニアになりたいのか?」といった問いかけを重ね、留学生に考えてもらいます。
同時に、企業側の知識も伝えることが多いです。就活のスタートでは「エンジニア」という漠然としたイメージにとどまっていることが多いので、エンジニアの職種を説明し、メーカーによっても募集職種が違うことを説明することもあります。そして、どの仕事に興味をそそられるかを考えてもらったりします。また、企業視点への気づきを促すために、「メーカーは留学生に何を期待しているのか?なぜ日本人学生だけでなく留学生も採用するのだろうか?」という問いかけを行います。

3人目の留学生は、「母国の日系企業で求人がたくさんあると聞いたので、日本で2~3年仕事を経験したら、母国に戻ろうと考えている」と言っています。東南アジア出身の留学生に多いケースです。私たちのほうからは、「日本で2~3年仕事を経験する中で、あなたは何を得たいのか?」というような問いかけを行い、自分のこれからのキャリアも含めて留学生に考えてもらいます。
同時に、企業視点についても問いかけをします。「企業は新卒社員のあなたを育てるために時間とコストをかける。2~3年仕事をして帰国するとしたら、その期間に企業にはどんなメリットがあるだろうか?」ここで、「たしかに・・・」と考え始める留学生はとても多いです。

さきほどの例で見ていただいたように、第一段階にいる留学生が第二段階へ上がっていくためには、2つ必要なことがあると思います。
まずは、知識としての「企業視点のインプット」です。上記の4つのカテゴリーの表にあるような、「日本企業は留学生に何を期待しているのか?」ということを知っておくことはとても重要ですし、実際に留学生が企業説明会に行ったり、インターンシップに参加したりして、企業から直接話を聞くことも有効だと思います。ほかにも、留学生が企業視点に触れる機会はいろいろあると思います。

そしてもう一つ重要なのが、考えを深め、「自分視点」と「企業視点」の接点を見つけていく「問いと思考」を行うことです。
企業視点の知識を自分に置き換えて考え、自分視点との接点を見出していくには、自分で考えることが必要です。これは、留学生が一人でもできます。つまり、自分自身に問いを立て、自分で思考するという作業です。ただ、誰かと話しながら問い・思考を繰り返すほうが、より効果的です。ここも私たち支援者ができることであろうと思います。

さきほどのキッチンメーカーの面接を受けた、第一段階の留学生が、この1と2を行い、どのように変化したかをご紹介します。
「中国語を活かして活躍したい」と言っていた留学生は、「中国語を活かして何がしたい?なぜキッチン?なぜこの企業?」という問いを自分自身に立て、思考していきました。
同時に、「なぜこの企業は留学生を採用するのだろうか?自分を採用する企業のメリットは?」という企業視点を考える問いを立てて思考していきました。
このプロセスを経て、自分視点と企業視点が明確化していき、接点が見えてくる、こうなると第二段階に上がります。

第二段階は、「自分視点」「企業視点」が明確化し、接点ができる段階です。
さきほどの留学生は、問い・思考を繰り返す中で、「日本の良い製品を母国に広げたいんだ」という自分視点の一つを自覚するようになりました。そして、企業についても、「自社製品を海外に広げてほしい、その役割を留学生に期待している」という視点を持つ企業が多くあることに気づきました。こういう企業で働きたい、という接点ができたのが、この段階です。
留学生は、面接でこのように話しました。
「中国語を活かして海外営業として活躍したい。御社の製品は技術も高くデザイン性も高い。そういう良い製品を母国に広げたいんです!」
これを聞いた企業は、このように考えます。
「うちの製品と、海外展開事業について、興味・意欲がありそうだ。うちも中国展開をさらに強めていきたいし、合うかもしれない。」
ただ一方で、企業はまだこのような懸念を持っています。
「ただ、なぜシステムキッチンメーカーであるうちを選んだのか、そこがあまり見えない。中国向け営業として、どこまで活躍できるか、決め手に欠けるな。」

内定まではもう一歩。
企業の背中を押す要素がもう一つ必要です。

教職員の方々も、この段階で内定が決まっていく留学生と、なかなか決まらない留学生がいると思いませんか?私たちも、何か決め手となる要素があるということは経験的に感じていましたが、改めて整理してみたことがありませんでした。
今回、企業の背中を押す要素を、これまでの経験から洗い出して、整理してみました。

それが上記のスライドです。
第二段階の留学生が内定を獲得していくために、企業の背中を押す要素には、以下のようなものがあると考えました。
★マッチ度の高さ
★スキルの高さ
★希少な国籍
★その留学生とその企業の結びつきを強めるフック(強い志望動機)

★印の最初の3つは、留学生の属性や持って生まれた能力に左右される要素が強いですが、最後の4つ目の「フック」は、すべての留学生が持つことができる可能性があります。
この「フック」がどのようなものか、私たちは、以下のように考えました。さきほどの留学生を例にお伝えします。
この留学生は、「なぜキッチンに興味を持ったんだろう」「日本のキッチンを中国に販売するってどういうことだろう」という問い・思考を繰り返すうちに、このような考えが生まれました。
「中国の実家のキッチンは使いづらく、母が苦労していた。日本のシステムキッチンは母国でも喜ばれると思う。」だから「性能の良いシステムキッチンのメーカーで中国向け営業がやりたいんだ」という考えです。
つまりここで、自分とこの企業を強く結び付けるフックのようなものができ、これが強い志望動機となっていったと考えられます。
この留学生は、キッチンメーカーの面接でこのように言いました。
「中国語を活かして海外営業として、母国にシステムキッチンを売っていきたい。中国の実家のキッチンは使いづらく、母は苦労していた。日本の性能の良いシステムキッチンは母国で喜ばれると思う。」
企業側から見た活躍の解像度がさらにあがり、内定が決まるケースが増えていきます。

最後の第三段階は、「自分視点」と「企業視点」が重なり「自分事」になる段階です。
第二段階までの、問いと思考を留学生が繰り返す中で、一部の留学生は第二段階を超えていくな、というのを私たちは感じていました。

さきほどの留学生を例に見てみましょう。この留学生と最終面接の練習をしていたとき、留学生は、中国で求められるキッチンて何だろうか、と真剣に考え始めていました。自分の地元は餃子文化だから、日本のキッチンだと餃子をゆでる大きな鍋が置けないな、とか、ほかの地域の食文化も調べる必要がある、という感じです。
その思考を経て、最終面接でこのように言いました。
「母国にシステムキッチンを売っていきたいのだが、日本と同じものが中国で売れるだろうか?と自分で考えてみた。地元の中国北部は餃子文化なので、広い作業台と大きな鍋が置けるコンロが必要。売り先の食文化によって、製品に工夫が必要だと思う。そこも考えられる営業になりたい。」
企業側は、このように考えました。
「うちのメンバーになったかのような視点で、うちの会社のビジネスについて自分の頭で考えてくれている。もちろん、まだアイデアも甘いし粗削りだが、「自分事」として問いを立て考える思考を持っている。」

私たちは、今回、この段階を「第三段階」と名付けることにしました。
この段階の留学生は、製品やサービス、海外展開等について、自分事として自分の頭で問いを立てて考えています。面接対策のためにひねり出しているのではなく、自分が考えたくて考えているというのが重要なポイントです。企業側としては、自社の経済活動にコミットしていける人材として一気に解像度が上がります。
そしてこのような留学生は、入社後も活躍していく人が多いと、私たちは感じています。


第一段階から第三段階を一枚のスライドにまとめてみましたので、参考にしてください。

キーノートスピーチのまとめとして、上記のスライドのポイントを4つ押さえておきたいと思います。

次の「就活事例紹介」では、実際の留学生のいくつかの事例から、3つの段階を具体的に見ていきましょう。

 

 


4.留学生の就活事例紹介

担当:株式会社ASIA Link 井上洋輔


まず、第一段階の、あいまいな自分視点のみでまだ内定が決まっていない留学生の事例からご紹介していきます。


インドネシア人留学生のAさんです。
日本の大学に通う大学4年生です。グローバルスタディ専攻、いわゆる文系の学生で、日本語と英語はビジネスレベル。語学力は高いのだが就職がなかなか決まらないという例です。
Aさんの就職活動を見ていきますと、就活の軸となっているのは「英語が活かせること」で、英語が使える会社しかエントリーをしていません。職種は「クライアントと英語で相談ができる仕事」を希望しています。状況を聞くと、書類選考には合格するが、面接ではなかなか先に進めない、という状態です。英語が得意でそれを活かしたい、という希望からスタートする留学生は、私たちが面談する学生でも多いのですが、「英語を使って何がしたいか」ということが明確になっていない方が多いです。企業が「英語が使える外国人に何を求めているか」という視点がないために、企業との接点が見つかっていない状態です。


このような留学生への支援内容の一例をご紹介します。第二段階へ上がっていくための支援として、はじめに知識として企業視点を説明し、「企業が何を求めているか」ということを知る必要があることを伝えました。企業が求めているのは「英語ができる人材」ではなく、「英語を使って業務ができる人材」であることを伝え、製造、営業、購買、広報、管理など様々な業務の中で、海外とビジネスをする際に英語が必要になってくることを説明しました。まずは企業でどんな役割が求められているかを知る必要があること、その視点を持って説明会などに参加して欲しい旨を、アドバイスしました。
会社説明会では必ずしも「留学生にはこんな役割を求めています」と説明してくれる企業ばかりではありません。留学生向けの説明会であっても、それがはっきりしないこともあります。自分からその視点を持って説明会等を聞き、分からない場合は質問する必要があります。
次に、自分視点の明確化と企業視点との接点を考えることを促しました。「なぜクライアントと相談したい?」「クライアントとは誰?どんな人?」「相談とは具体的にどんなことをイメージしている?」など学生との面談で問いかけ、自分視点をより深めていくよう問いと思考を繰り返しました。そうすることで、自分視点を明確化していき、企業の仕事の中に「これがやりたい」と思えるものがあるかどうか、自分と企業との接点を考えていくようアドバイスをしていきました。この留学生は「海外営業として、母国に製品を広げる仕事がしたい」という自分視点が明確になり、現在も就活をしています。
全員が同じ支援方法でうまく行くわけではありませんが、一例としてご紹介しました。


次に同じく第一段階の例として、中国人留学生Bさんの例です。
Bさんは大学院の修士2年生、機械工学専攻、いわゆる理系の学生です。日本語はビジネスレベル。
就職活動の軸は「専門性を活かせること」で「機械設計ができる仕事」を希望しています。理系の留学生に多いケースで、一見問題ないように見えますが、就活に苦戦していました。私たちも本人に話を聞くまでは「高い専門性があるし、人材ニーズの高い機械系なのになぜ?」と思っていたのですが、本人は「何が作りたいのか?」「どんなエンジニアになっていきたいのか?」「どうして設計が好きなのか?」などがどれも曖昧で、企業にとっては採用後の成長や活躍が見えず、選考に落ち続けていました。自分視点も曖昧で、企業視点もない、いわゆる第一段階の学生でした。


このBさんに対してのアドバイスも一例としてご紹介します。
まずは、先ほどのAさんと同じように、企業視点=企業からどんなことを求められているか?ということを知識として伝えました。例えば、企業からするとただ「機械設計がやりたい」だけでは採用できない。製品にこだわりがなくても「生産効率を上げる工法を開発したい」「軽量化できる材料を探したい」「とにかく設計が好きでどんどん新しい設計にチャレンジしたい」など、企業の中でエンジニアとしてどのように活躍していきたいかという視点がないと、企業としては入社後の活躍や成長が期待できないと伝えました。つまり、企業にもメリットがある視点を持つことが必要だとアドバイスしました。
その上で、より自分視点を明確にする問いかけをしていきました。「なぜ設計がやりたい?」「どんな時に設計をしていて楽しいと感じる?」「何がきっかけで設計が好きになった?」などの問いかけをすることで「なぜ設計が好きなのか?」ということを明確にしていき、Bさんの中で以下のような気付きがありました。
「子供の頃貧しくてあまりオモチャが買ってもらえず辛かった。CADに出会い、その世界では何でも作ることができることを知り、設計に夢中になった。今は学生なので設計は画面上だが、仕事で設計ができれば、実際にそれが製品になる。それはすごくやりがいがある仕事だと思う。」
どのようなことで自分視点が明確になるかは人それぞれだと思いますが、Bさんの場合は問いと思考を繰り返すことで、気づきがありました。Bさんは現在この設計に対するやりがいを企業との接点として就活を進めています。


次に、第二段階の、自分視点と企業視点が明確化し、接点が結びついた留学生の事例をご紹介します。時間の関係上、②の事例のみご説明しますので、①の事例についてはスライドをご覧ください。


中国人留学生のDさんです。
大学4年生で、生物化学専攻、いわゆる理系の留学生です。
就活を始めた当初は「専攻分野の化学・バイオの知識を活かして、化学分析や解析の専門家として成長していきたい」という軸で就活をしていました。自分視点はある程度明確でした。

Dさんは上記のスライドの①~③の流れで、企業視点に気づき、自分視点と企業視点の接点が見つかっていきました。

ただ、接点が見つかっただけで内定までたどり着いたのではなく、その後の選考の中で企業に対して「フック」ができ、それが強い志望動機となり内定が決まりました。上記のスライドの④~⑥が、その過程です。

Dさんのケースは、自分視点が明確化⇒企業との接点が見つかる⇒企業へ応募、という流れで第二段階へ上がりました。しかし、この企業とは専門分野のマッチング度が特別高い訳でもなく、企業が求める希少な国籍だった訳でもありません。フックとなる強い志望動機が見つかったことで内定へとたどり着くことができました。
このフックは、Dさんの場合は「会社のビジョン」でしたが、他にも製品の魅力や社長との相性など、様々なものがフックになる可能性があります。


最後に、第三段階の、自分視点と企業視点が重なり自分事として考えられるようになった留学生の事例をご紹介します。


ベトナム人留学生のEさんです。
経済学専攻の大学4年生。英語はビジネスレベルですが、日本語はややたどたどしさがあるレベルでした。
Eさんの就職活動の状況は、上記のスライドをご覧ください。
自分視点を明確化するために、企業のニーズを積極的に自分で調べ、企業との接点を見つけることができている学生でした。すでに第二段階に上がっている学生でした。
私たちが、Eさんが第三段階にいるのではと考えたきっかけは、ある選考会に参加した時の、Eさんの質問からでした。

Eさんは、環境調査の企業がベトナム進出をしていて、留学生採用をしていることを知り、興味を持って選考会に参加しました。選考会に参加する前には、会社のホームページである程度の情報は仕入れていましたが、事業内容を詳しく聞いたのはこの選考会が初めてでした。この選考会でEさんは、面接官に以下のような質問をしました。
Eさん:ベトナムでの環境調査事業は日本よりも時間がかかるとの説明を聞いたが、その原因は何か?
面接官:ベトナムは日本ほど環境に関する法律面が整備されていないため。

Eさん:どの分野が整備されていないのか、もっと詳しく教えてください。
面接官:汚水やアスベストなどの分野が整備されていない。

Eさん:例えば、ベトナムで、実際に汚水の分野で環境調査の仕事をする場合、課題となることは何か?
面接官:法律で工事方法や手順が定められていないため、自分たちで工事方法や手順を考え、提示する必要がある。

他の学生が「何時から何時まで働くか?」「一日の業務の流れを教えてください」などの質問をするなか、Eさんはもしベトナム事業を自分が行うならどんなことで貢献できるのかを知りたい、という視点で質問をしており、会社の事業を自分事のように考えている人である、と私たちは感じました。
このように、自分視点と企業視点の接点を考えているだけでなく、企業の事業・利益を自分事のように考えられる人を、私たちは第三段階にいる人であると考えています。実際にこの学生は選考会でも高く評価されて、合格しています。


第三段階の方を、もう1名ご紹介します。
中国人留学生のFさんです。
電気電子専攻の大学4年生で、就職活動は上記のスライドのような進捗でした。
この留学生も、自分視点を明確化して、企業視点との接点について意識できている第二段階の方でした。

Fさんと、ある企業の面接練習を行った際に、私たちはFさんが第三段階にいるのではないかと考えました。
電気装置メーカーの面接練習をしている時、どのような逆質問をする予定か本人に確認しました。その際、企業の開発投資とコストのバランスについて聞いてみたいとFさんが言ったので、どうしてそれが聞きたいか聞いてみると、次のような答えでした。
「大学では新しい実験装置が必要な時は、教授に依頼すれば買ってもらうことができた。だが、企業ではコストになる。企業での開発投資とコストのバランスはどうなっているのか。企業はたとえコストになっても、必要な開発には投資するのだろうか、と疑問に思っていた。メーカーで働いている先輩に聞いても「会社による」と言われた。会社に直接聞いてみたいと思った」ということでした。

実際にFさんは、最終面接で以下のような逆質問をしました。
「メーカーで新しい開発設備を導入する際、導入を希望するエンジニアと予算管理者の間で、予算に関するバランスを取る必要があると思います。設備導入はコストであることは理解していますが、御社における開発投資とコストのバランスを教えて頂けますか?」
Fさんはエンジニアとしての自分の成長だけでなく、会社のコストにまで考えが及んでいる、会社の事業を自分事のように考えられている、ということで、私たちはFさんも第三段階にいるのではないかと考えています。
Fさんもこのメーカーから高く評価され、内定をもらっています。

留学生の就職支援をする中で、留学生には日々問いかけをし、自分視点、企業視点が明確になるよう促しているのですが、その中でも第三段階に行く人と、行かない人がいます。
その差は何か、まだ私たちにもはっきりとは分かりません。
ただ、この二人には、上記のスライドにある5つの共通点がありました。

なぜこの二人が第三段階になったのか?もしかすると、個人の資質によるものも大きいのかもしれませんが、私たちとしては、何らかの支援方法を探りたいと考えています。この研修会をきっかけに、支援の在り方を皆様と考えていけたらと思っています。

 

 


5.パネルディスカッション

「雇用企業側から見た、留学生採用における企業視点とは?」
進行役:株式会社ASIA Link 小野朋江
パネリスト:株式会社コスモテック 代表取締役 高見澤友伸さん
パネリスト:ユニパルス株式会社 代表取締役 玉久明子さん
パネリスト:黒田精工株式会社 人事ご担当者 伊藤 悠さん
(以下、敬称略)

今回のパネルディスカッションでは、前半のキーノートスピーチと就活事例紹介の内容を受けて、実際に留学生を雇用している企業の認識・見解を伺ってみよう、というコンセプトで行いました。
今回のパネリストの皆様も、お忙しい中、快く引き受けてくださいました。
以下に、パネリストの方々の回答の要旨をまとめます。

【企業紹介】
事業内容・海外へのビジネス展開状況・外国人社員の雇用状況

高見澤:当社は、PCなどの半導体電子部品で使用される工業用粘着テープなどの開発製造を行うメーカーです。中国に製造拠点があります。外国人採用は20年ほど前から行っており、採用目的は海外展開のためと、日本人の優秀な人材採用が難しいという点からでした。現在外国人社員は4人おり、メインは中国向け海外営業職です。1名は技術開発職で、この社員は外国人だから採用したわけではなく、技術分野の専門性で採用しました。

玉久:当社は、センサーを作っているメーカーです。センサーと併せて、その強さを表示する指示計も開発しています。また、ロボット開発をしている子会社ではバランサーやアクチュエーターも開発しています。海外展開は中国に子会社、インドとタイに販売拠点があり、それ以外にもベトナムやマレーシアへの展開を考えています。外国人採用の目的は海外への拡販です。母国語を使いながら、海外の代理店と一緒に働いてくれる社員を採用しています。

伊藤:当社は、工作機械や機械用組み込み精密部品を作っているメーカーです。半導体や電気自動車のメーカーなどが顧客となります。海外展開は、アメリカに子会社、マレーシアとインドに拠点があり、ドイツ、イタリア、メキシコなどに関連会社があります。海外展開に合わせて外国人社員も採用していく流れが出てきて、現在17名の外国人社員がいます。職種は海外営業とエンジニアで、毎年外国人社員の採用を行っています。

【企業視点について】
質問1:冒頭のキーノートスピーチの中で、企業視点の提示を行いました。

この中に、御社が留学生の採用で期待しているメリット(貢献)はありますか?また、その中でとくに優先度の高いものも教えてください。

高見澤:「外国人の強みを活かした活躍」は、当社の場合最も大きな採用目的ですので当然あるとして、「国籍を問わず高い能力」も職種を問わず期待したいです。そしてやはり、ある程度長期間働いてほしいため「安定した労働力」としても期待しています。
特に優先度が高いものは、「ビジネス」と「採用」の二つの側面で視点が異なります。「ビジネス」の面から言うと、海外展開のために外国人を意識して採用するため左上の「外国人の強みを活かした活躍」です。ただし、「採用」の面から言うと、日本人・外国人を問わず、当社は日本的な採用をしていますので、やはり長期的な活躍をして欲しいと考えています。

玉久:コスモテックさんとほとんど同じで、当社も「外国人の強みを活かした活躍」を最も期待しています。日本人社員にはできない、外国人社員ならではの活躍です。海外の代理店と働くには母国語が必要になるので、母国語の強みを活かして代理店とのスムーズな意思疎通ができるのはありがたいです。「国籍を問わず高い能力」は、日本人社員も含め国籍問わず期待しています。右下の「安定した労働力の確保」は当社にとって一番大きな壁になっています。外国人社員が長期的に活躍してくれるというケースがあまり実現していません。入る側と受け入れる側の見方が大きく違っている部分だと思います。

伊藤:当社では、「外国人の強みを活かした活躍」としては、結構シンプルに「語学力=日本語・母国語・プラスα」があるかどうかを見ています。あとは、左下のカテゴリーの、留学生ならではの発想や社内の活性化を期待していて、何か日本人社員に刺激を与えてくれればと思っています。当社の社風なのかもしれませんが、日本人社員はおとなしい人が多く、空気を読んでしまう傾向があります。一方、留学生は物おじせずに「それは違うのでは?」と言ったりするので、それが良い方向に作用していると感じています。
また、最近右下の「長く定着して働いてくれること」については、外国人社員の離職者が出たこともあり、課題を感じています。

【選考での見極めについて】
質問2:(質問1で答えていただいた内容について)そのメリットを持つ留学生を選ぶために、御社では選考の課程でどのように見極めようとしていますか。
その選考方法では見極められない部分・難しい部分もあれば、教えてください。

高見澤:中国向けの海外営業として活躍できるか、という見極めについては、中国語が母国語であることと、中国の文化を理解していることが最も重要なので、留学生の国籍と経歴を見ればだいたい判断ができます。
難しいのは、当社と合うかどうかという見極めです。この相性の見極めは、長期的なスパンで、リーダーシップを持って積極的に働くことができるか、という定着の見極めにも直結します。そして、長年の経験から言うと、この見極めは「面接だけでは不可能である」というのが我々の結論です。中途採用の場合は、職務経験から判断できる材料が少しありますが、新卒の場合は難しいです。

玉久:当社では、外国人社員が長期的に活躍してくれるかどうかが大きな課題になっていることを、さきほどお話ししました。この、長期的に働くことに対しての見極めを面接で行うのは、本当に難しいです。面接時には長期的に働く気持ちだったとしても、1年後は気持ちが変わっている可能性もあります。面接では、その人がどのような人生を送っていきたいかを軸に聞いています。何年後にどうなっていたいのか?何年くらい日本にいたいのか?何についてのエキスパートになりたいのか?母国に帰って何がしたいのか?というように、その人のライフプランを聞いています。当社で長く働いてくれるかということだけでなく、その人と当社のメリットに交わる部分があるかどうかを重視します。そのため、自分のやりたいことを明確に持っている人のほうが、見極めがしやすいです。そういう人の場合、「じゃあ、こういう風にやってみよう」と、お互いの交わる部分を考えていくことができるからです。当社は大規模な企業組織ではないので、柔軟に対応ができます。やりたいことがはっきりしている人のほうが、個別の対応がしやすいのです。
また、長期的な活躍については、女性の方が難しいと感じています。数年後に家族に呼ばれて母国へ帰ってしまったり、結婚して辞めてしまった社員もいました。家族に勧められて留学してきた人もいるので、家族に強く言われたら断れない。30歳くらいで退職になるケースが多いです。これは面接で見極めるのは無理ですね。でも本当は、BtoBメーカーでは、対人関係が上手な女性の営業は活躍するのです。また、当社では女性の方がメンバーシップ型のキャリアを希望する人が多い気がします。仕事や組織をダイナミックに捉えながら、全体の中で働くことを好むのは女性に多い気がしており、私たちもそこに期待して実際に時間をかけて教育していきます。しかし、時間をかけて教育した人が辞めてしまうのは非常にコストが悪い。新卒で採用して7年くらい経つと30歳です。活躍してくれていて、これからさらに、という時に、結婚で帰国することになってしまった社員には、帰国後の働き方について当社としても様々な提案をしました。しかし、帰国すると家族の意向が強くなりますので、残念ながら退職となりました。

伊藤:さきほどお話ししたように、外国人留学生には大前提として語学力は求めますが、それ以外に求めるものは、アグレッシブさや新しい発想などです。語学力があってアグレッシブな留学生の中から、さらに、入社後に長く活躍を続けていけるかを見極めようとしています。
見極めの方法ですが、語学力とアグレッシブさは、面接の中で見極めることができていると思います。その見極めは、入社後もはずれていません。
ただ、長期的に働けるかどうかの見極めは、難しいです。面接では、その留学生の配属先が決まっているのであれば、配属先の社員にも面接に入ってもらったりしています。また、3回面接をしているのですが、毎回1時間くらいかけていろいろ、根掘り葉掘り聞いています。面接では、会社の良いところだけでなく、悪いことも伝えるようにしています。それでも希望してくれる学生であれば長く働いてくれるのかなと思います。
アグレッシブさと定着は、両立が難しい面があるかもしれませんね。会社としては、アグレッシブな人が欲しいのですが、それで最近3名くらい辞めてしまい、課題を感じています。何年働くことをもって定着と言えるか、この判断も難しいですが、定年までとは言わないけど、やはり10年くらいはいて欲しい。3年くらいで退職となると、企業としてはデメリットの方が大きいです。

【留学生の就活における3つの段階について】
質問3:前半のキーノートスピーチと、就活事例紹介の中で、留学生が内定に近づいていくプロセスを3つの段階で提示しました。これについて、どう思われますか。うちも第一段階の学生は採用できないな、とか、やはり第三段階の視点が欲しいとか、逆にうちは違う基準で採用している、など教えてください。

高見澤:まず、フレームワークとしては面白いですね。第三段階は一定数いて、これは日本人でも同じだと思います。第一段階の人は採用できません。第二段階と第三段階の境界はグレーかなと感じます。第三段階まで行っていなくても、会社への貢献について考えようとしているか、違う言い方では地頭の良さと言ってもいいかもしれませんが、そこが見えれば採用します。このスライドのように、学生が企業への貢献について仮設を立てていろいろ考える場合、その仮説・予想は大抵間違っています。学生ですから間違っていていいんです。それよりも、考えられる力と考えようとする姿勢があるか?が大事だと思います。
また、別の視点になりますが、就職はある企業というコミュニティに参加する・帰属することですので、上記に加えてコミュニティの文化に合うかどうかを考えられるかどうかも大事なのでは?と思います。このコミュニティというのは、言語化できない文化を含めたコミュニティです。この、コミュニティに合うかどうかを面接で判断するのは、学生にとっても、我々にとっても難しいですね。面接を3回、合計4時間半くらい話しをしますが、それでもわかりません。やはり、インターンシップなどの「共同活動」が必要なのではないかと思います。

玉久:当社が扱っている商材の性質上、新卒の学生がかなり複雑な自社製品を理解していくには、第三段階の人でないと難しいと思います。第一~第三段階の図はよく分かりますが、当社に面接に来るのは第一段階か第三段階です。BtoBの複雑な製品なので、業界の特性上、新卒の学生が自分視点との接点を見つけることが難しいため、第二段階は当てはまりません。結果的に、第三段階の人しか採用していませんが、これは自分事として具体的に考えることができるかを求めるというよりも、複雑な製品を理解していくための理解力・思考力があるかどうかを重視します。BtoBの複雑な製品なので、「高精度のものを自国に持って行ってこんなことしたい」と漠然と考えている人はいますが、詳しく説明できる人はいないからです。
また、当社では第三段階の見極めと一緒に、「どう生きていきたいか」という今後の人生プランと当社でのキャリアが合っているかどうかを見ています。
選考の中では、製品知識を覚えられるかどうかの見極めは、試験を行っています。具体的には、製品知識のレクチャーを1時間半✕2回で行い、その後理解度の試験をします。そのアウトプットを見て見極めます。理系か文系かは関係なく、むしろ当社の営業はほぼ文系出身です。知識を問う試験ではなく、理解力・飲み込みの早さを見ています。
さらによい選考方法があれば、アイデアが欲しいです。

伊藤:第一段階の学生はお断りが多いのかなと思います。当社では大体第二段階であれば、マッチング具合にもよりますが、採用してもいいかなと考えています。第三段階まで行く人にはなかなか出会わないこともありますが、第三段階の学生は、3年くらいで辞めてもっと大きな会社に行くのではないかという心配もあります。ビジネスが分かっていて、こういうスキルや知識を身につけたい人だなと分かるので、「その先も見えてるのでは?」と感じるからです。当社でも過去に、非常に優秀な人だったけれど3年くらいで辞めてしまった人は同じようなケースでした。

【外国人留学生と企業の希望や考え方のギャップについて】
質問4:最後に、留学生と企業の希望や考え方のギャップについて考えたいと思います。
留学生が「企業視点」をきちんと持っていたとしても、留学生側の希望と企業側の希望のギャップがあるために、留学生が応募を希望しなかったり、内定・採用に至らなかったり、早期退職になったりするケースがあります。
このギャップについて事前に参加者アンケートを取ったところ、このような結果になりました(<>内の人数はアンケートの投票数)。
御社では、ここに挙がっているギャップについてどう思われますか。これはうちにもあるな、とか、これはうちにはないけど十分考えられるというものがあれば教えてください。

高見澤:一番選んだ人数が多い1番(役割・仕事内容のギャップ)は仰る通りで、国籍に関わらず、自分の希望と会社の希望が合わないということは多々あると思います。当社は小さい企業なのでアジャストしていけますが。他にも、本人の能力が足りないために、希望する役割・仕事に就かせることができないというケースもあります。
5番(昇進に時間がかかる)は給与の問題として、表面的に出てくることがあります。そこは個別に対応して「ちょっとだけ贔屓する」ということで当社は対応しています。

玉久:当社のこれまでのケースで、且つ私が知っているケースとしては、6番(ジェネラリスト)だけかなと思います。1番(役割・仕事内容)については、当社の場合は「海外営業職」のように職種を決めて採用しているため、当てはまりません。

伊藤:当社の場合、3番(人材育成)と5番(昇進に時間がかかる)のケースがありました。当社では新卒社員を、大体3年くらいかけて一人前にするという教育でやっていますが、本人にとっては生ぬるかったのか、評価面で一人前扱いされないこともあり、退職してしまいました。本人はとても能力があって、1年目から大きなプロジェクトを成功させて社長賞を取ったりしているのに、会社内のグレードが上がらなかったことも原因かと思います。会社としては、社内の他の社員とのバランスを取る必要もあり、昇進させられないという事情もありました。本人は満足できなくて、辞めてしまったのだと思います。

 

【参加者からの追加質問】
質問5:採用前にどのようなことを期待したか、そして、それに反したマイナス面と、期待した以上・期待したこと以外のプラス面があれば、お聞きしたいと思います。

高見澤:まず期待することに関しては、当社は海外営業職として採用しているので、海外営業ができるかどうかを期待します。マイナス面では人間関係で問題を起こしたケースがありました。日本人と外国人のトラブルというよりは外国人社員同士のトラブルでした。期待したこと以外のプラス面では、海外ビジネスだけでなく国内ビジネスも積極的にやってくれたことです。リーダーシップを持って、自立的に動いてくれています。

玉久:期待することは同じく海外営業としての期待です。マイナス面はたぶんないと思います。プラス面としては、日本人にとって学びになっていることです。外国人社員に対して、こちらがどのような働きかけをしたら、どう育っていってくれるかは、当社にとって知見になっていると思います。また、外国人社員と海外代理店のやり取りを見ていると、その国の人間関係の作り方や商習慣が学べます。それは我々日本人にとっての学びにもなります。

伊藤:採用前には語学力と留学生ならではの特徴を求めているので、そこに関しての期待はあまりズレはありません。マイナス面はあまりありませんが、強いていうなら勤務態度があまり良くなかった外国人社員については、特別扱いすると周りによくない影響を与えるというケースがありました。ただ、これは本当に特異なケースです。プラス面では、若くして昇進していって、日本人社員の部下を良くまとめてくれている外国人社員もいることです。年功序列から実力主義に社風を変えていこうとしている中で、よいモデルケースとなっています。

質問6:日本の製造業で働く外国籍社員にインタビュー調査した中で、企業視点に関して、経営層や人事部門は外国人の強みを活かした活躍のプライオリティが高いが、配属された現場(営業など)では日本人と同じように求められることが多く、ギャップとストレスを感じている事例がありました。このような点はいかがでしょうか?また、何か気を付けたり、解決されたことはありますか?
(質問者の方からの補足:「日本人と同じように求められること」=ここは日本なのだから、地域との付き合いや、仕事外での付き合い(飲み会等)も含め、日本人と同じようにやってほしいということ)

高見澤:まず前提として、当社では現在、外国人は外国人としての働き方でよいという考え方はしていません(経営層・人事部門も、外国人社員に対して日本人と同じように求めている)。ただし、昔は(経営層・人事部門も)この考え方(外国人社員は日本人と同じようにしなくてもよいという考え方)がありました。そのため、現場とのあつれきはありました。その時に工夫したことは、「外国人社員にしかできない仕事(外国語を使う仕事)を与えて、成果を出してもらう」ということです。さらに「経営者が外国人社員をちょっとだけ贔屓する」ことです。そうやって、まわりの日本人社員に、外国人社員の存在を認めさせていきました。
(高見澤さんからの補足:私の見解としては、成果は “(企業文化を含む)環境” ✕ “スキル” なのですが、どうしても言語化できる “スキル” に議論が偏りがちです。日系企業に入社するのは、(言語化できない)ある文化を持ったコミュニティへの参加なので、それに合わない限り成果が出ないのは当然だと思います。)

玉久:一つ思い浮かぶケースがあります。当社の中国拠点のマネジメントをやってもらいたくて、中国で中途人材を採用しました。マネジャースキルを身に着けていただくために、日本の本社での国内営業も経験してほしいと考え、日本の本社に来て国内営業をやってもらったところ、本人から「ハードルが高すぎる。国内営業についていけない。」という申し出があり辞めてしまったのです。本人としてはギャップがあったのかなと思います。こちらから見ると、十分仕事ができていたので、青天の霹靂でした。

伊藤:当社としては、「日本人と同じように求められる」という認識ではなく、「黒田精工の社員として」成果を出して欲しいという認識です。そうして成果を出していけば、きちんと評価されます。

 

 


6.教育機関における、企業視点を持つための取り組み事例紹介

進行役:株式会社ASIA Link 井上洋輔
パネリスト:山梨学院大学 グローバルラーニングセンター 河野 礼実さん
パネリスト:東京電機大学 学生支援センター キャリア支援・就職担当 角田 剛紀さん
(以下、敬称略)

今回のプログラムの締めとして、テーマである「企業視点」について、教育機関での取り組み事例を伺うパネルディスカッションを行いました。
パネリストは、留学生へのキャリア教育・日本語教育を担当されている河野さんと、日本人・留学生を含めた学生全体への就職支援を担当されている角田さんです。
直前の登壇依頼になってしまったにもかかわらず、お二人とも快く引き受けてくださいました。
以下に、パネリストの方々の回答の要旨をまとめます。

【3つの段階について】
質問1:第一~第三の段階について、就活している留学生と接する中で、どのように感じていますか。

河野:それぞれの段階の学生がいます。ただ、第三段階はごくごくまれです。中途の人へのキャリア支援では出会うと思いますが。
私は、第一段階の前の、「第0段階」というのもあるな、と思っています。
第0段階とは、「~が好き」「~に興味がある」「会社に入って~を勉強したい(大学入試の志望動機か?)」という段階です。「自分視点」というよりも「学生のまま」の視点で、就職活動初期の学生に多いです。これは留学生に限らず日本人学生も同じです。まずは、「仕事とは?」「働くとは?」というところの理解から始めていく必要があります。
第0段階から第1段階への支援についてですが、「~が好き」から次の段階に行けない学生が多いです。好きならその製品を買えばいいだけで、その企業で働く理由にはなりません。学生が理解できるまで、腑に落ちるまで、問いと思考に付き合っていきます。

角田:就職活動はビジネスの世界です。学生は、ビジネスの経験は当然していません。学生をビジネスの世界まで上げるのは、すごく苦労があります。
それが「0段階」なのだと、今自分も納得しました。
当校では、「第一段階」の自分視点を明確にしていくところを、1年生からスタートしていきます。理系の学生たちはとてもまじめです。夜遅くまで研究室に残っていたり、土日も研究していたりします。1年生から課題に追われて一生懸命勉強している学生たちです。
こうやって勉強に打ち込んでいれば、大学に4年間いるだけで自分視点はだいぶ高まっていると感じています。

【企業視点を持つために】
質問2:第二段階に上がるためには、企業視点を持つことが必要になってくると思いますが、実際に留学生の就活支援をする中で、留学生が企業視点を持つために取り組んでいらっしゃること、課題に感じていらっしゃることはありますか? 

河野:第二段階に上がるために私が学生と行っているやりとりは、キーノートスピーチにあった学生とのやり取り例と同じだと感じました。
学生には、「他者視点」と「関連付け」を意識させています。あなたが人事担当者ならどう思う?という問いを、ESの指導の中で考えてもらいます。
関連付けについても、なぜ私なのか?なぜその企業なのか?という関連付けを、ESという材料をはさんで一緒に話していき、解像度を上げていきます。
「なぜ?」と聞くと思考が止まってしまう学生もいるので、こちらからの質問も工夫しながら、あの手この手で行っています。
自分の考えを整理する材料も持ち合わせていない学生もいるので、企業説明会やインターンシップに行った学生については、行ってみてどんなところがおもしろかったか、つまらないとおもったか、大変だと思ったか、など、「どうだったか?」ということを本人に問いかけて聞くようにしています。
他者視点を持つということは、相手の視点に立つということです。ESを読む相手がいる、という想定をすることは大切な一歩だと思います。

角田:0段階から第1段階へ、第1段階から第2段階へ。学生たちをあげていくために、そこを考えながら日々仕事をしています。学生を就職させることはとても大事な仕事であり、大学がやるべき責務だと思っています。
そのために、学生がどうやって就職活動について理解するか、研究も勉強も忙しい中で理解してもらうために、本も出版しました。
(「就活の基礎 大学キャリア・就職担当職員が伝えたいこと」 文芸社)
自分視点と企業視点を持っていくために、学生には自分に由来する志望動機と、企業に由来する志望動機を両方書いてもらっています。そして、両方をからめなさいと伝えています。学生を見ていると、どちらかだけになっているケースは多いのです。
自分視点だけだと、「それが好きなんだ、良かったね」で終わります。
企業視点だけだと、「ほめてくれてありがとう」となってしまう。
両方を結び付ける作業は、自分でできる学生もいれば、自分で結びつかない学生もいますが、そういう時には「マッチングの部分を見なさい」と言います。
企業のHPすら見ていない学生もけっこういるのです。企業研究をして、すくなくとも経営理念とか社長の言葉とかを読み、自分自身の性格・価値観と合っているか、そしてどういう人材を求めているか、そこを見るようにアドバイスしています。
求人・企業の見つけ方にも課題があります。理系学生は研究室の先生や先輩の影響力が強いので、大手企業ばかり紹介される傾向があります。先生も中小・中堅企業をあまり知らないのです。日本人学生も大手有名企業しか知らない。
私たち就職支援担当からは、大学の求人検索の仕方とか、企業はたくさんあるんだということを教えています。実際には、学生も企業規模で選んでいるわけではない。大手企業しか知らないだけなのです。
研究室に所属していることのメリットももちろんあります。企業で就職している先輩たちが、時々研究室に戻ってきてくれて、仕事の話をしてくれるのです。自分の研究室の卒業生が会社で何をやっているかを知る機会があることは、とても貴重です。学内合説でも、卒業生が来て話してくれています。私たち学校職員が話すより、卒業生の話のほうが、学生たちも熱心に聞くんです。

河野:企業を知る、企業が求めている人材像を知る機会というのはとても重要ですね。当校でも合説は行っていますが、そういうところに留学生がなかなか来ないのが課題です。
授業の中でうまくいっているのが、PBL(課題解決型学習)です。地元の企業が参加し、「こういうことをしてほしい」という実際のビジネス上のプロジェクトを学生たちに与えてくれます。学生は実際に外へ出て調べたり考えたりしながら課題解決を考えていきます。企業を知る実践的な授業になっています。

【第三段階について】
質問3:第三段階は個人差はあると思いますが、第三段階まで上がっていくために、学生に何かサポートができるとしたらどんなものが考えられるでしょうか?また、何か普段課題に感じてらっしゃることがあれば教えてください。

河野:第一~第二段階は、キャリア支援の面談を念頭に支援をイメージすることができましたが、第三段階は就活の中の枠にはおさまらないと思いました。
大学に入学した1年次から、考える思考を深めていく学習スタイルが必要です。たとえば、中国出身の留学生には、答えが用意されている母国の学習スタイルに慣れてしまっている人が多いです。そのため、入学後、1年生の授業から、答えが一つではないということに気づいていく学習を取り入れています。同時に、問いを立てることも訓練していきます。自分で問いを立てていけるようにしていくことがすごく大事です。それを、スモールステップで行っていくことが大事だと思います。
他者視点についても、いきなり企業の面接官ではなく、まずは目の前にいる身近な教員にするとか。そうすることで、いざ就活の時に、その「他者」が企業の担当者になります。
また、自分の意見と誰かが言った意見が関連付けられるような学習も大切です。これの関連付けは本来、教科書を読む際に第1章と第2章の内容を関連づけるとか、授業のあらゆる場面でできることです。
初年次の必修授業から、この関連付けの学習を意識して行っていくことが必要だと思います。

角田:大学で4年間勉強すると本当に考える力がついてきます。こちらがちょっとしたきっかけを与えれば、学生は考える力を発揮できると思うのです。
たとえば、メディア系のVRを研究している学生は、バイトで小売り店で働いた経験から、小売り業界で働きたいという就活路線でした。しかし、なかなか受からない。私から、「研究内容のVRと小売りをからめられないか?」という質問をしたところ、お店のPOPを作るときやHPの画像作りへ自分の強みが生かせるということを自分で考え始めました。
第三段階までいくのは大変ですが、キャリア支援職員が一つ一つ学生に聞くことで、学生の本来の力が引き出されてくると思います。

 

 


7.まとめ

今回の研修会の「自分視点」「企業視点」のテーマは、私たちASIA Linkが日々行っている留学生の就職支援の中で、経験として感覚的に蓄積してきたものを一度俯瞰してみたい、そして論理的に整理して言語化してみたいという考えから生まれました。
そして、このテーマを深堀していく中で、「3つの段階」のフレームワークができました。
どんな留学生が第三段階にいくのか?これについて、私たちは今回の研修会をきっかけに、これまでASIA Linkが関わって内定が決まった留学生をすべて洗い出し、何か共通点がないか考えました。そして出てきた共通点は、早期に就活を始めていたからでもなく、インターンシップに参加していたからでもなく、「学校での勉強・研究にしっかり取り組んでいたこと」「物事を自分の頭でしっかり考えていたこと・考えようとしていたこと」でした。

大学など高等教育機関での学問の学びは、「簡単に答えの出ない問いに対して考え抜くこと、考え続けること」だと思います。この「思考する力」は、就活においても、そして社会人になっても、発揮される力だと思うのです。
日本の就職活動・採用活動の在り方には、「この人が何を一生懸命学んできたのか・考えてきたのか」ということがもっと重視されてよいと思います。企業にもぜひそこを見てほしい。
そして、学校でも社会でも、「学問ってすばらしい」ということを、私たち大人が学生たちに伝えていきたい、そう感じています。

最後はちょっと大きな話になってしまいましが、このような研修会の場に参加してくださる教職員の方々がいてくださるおかげで、私たちも考え抜く、考え続けることができていると思っています。心から感謝しています。
これからも知恵を出し合いながら、留学生の就職を応援していきましょう。

本日はご参加ありがとうございました!

 

 

 


8.参加者の方々からの感想を一部ご紹介します

【キーノートスピーチについて】
*第一段階、第二段階、第三段階という切り口がわかりやすく、学生にも伝えやすい。これは新卒に限らず有効に活用できる。
*第一段階⇒第二段階のステージに持って行くことに四苦八苦しているが、第三段階のステージを目指すことが、結局は就職後の定着にも繋がるので重要であると感じた。
*自分視点・企業視点に気づかせ理解を深めるための「学生への問い」が参考になった。

【就活事例紹介について】
*事例によって、各段階の状態が具体的にイメージしやすくなった。
*就職活動をしている志望者の、行動や心情の移り変わりを追求すると言うのはなかなか難しいものだが、私もより深く見つめていけたらと考えた。
*第一段階から次第に上の段階に意識が変わっていく学生の事例は、本人のポテンシャルが大きいと思うが、そうなるようサポートしていく力が必要だと再認識できた。

【企業パネルディスカッションについて】
*実際の企業の方の経験談であるため、納得度が高かった。
*企業にも個々の事情があるという点など、企業の正直なところが聞けてよかった。
*発言全体を総じて振り返ってみると、実は日本人の学生の就職活動と重なっていることが多く、「留学生ならでは」の問題ではない気がした。

【教職員パネルディスカッションについて】
*自分も普段感じていることを言葉にして頂き、自分のやっていることを整理できた。
*「第0段階」のお話しに、非常に共感・納得した。
*具体的な取り組みについて伺うことができ、大変参考になった。

【全体についての感想】
*生の声を聴くことは新しい発見もあり、刺激的。新しい発見や気づきもあった。
*自分自身は企業で勤務していた期間のほうが長いため、本日のお話は「企業としてそこを求めるのは当然」と感じた。しかし、学生、ましてバックグラウンドの異なる留学生にとっては「当たり前」ではないことを再認識した。そこを肝に銘じて留学生をしっかり支援していきたいと思う。
*大学への進学などをエスカレーター式に考えていると育たないため、教育方法そのものの変化、ひいては受験のありかたも変化する必要があるように思う。欧米のAdmissionなどは、その点がすでにできているのかもしれない。
*企業側の課題としては、長期雇用、社風(相性)とのマッチングをいかに採用活動で見極めるかという点にあると思う。やはり、短時間の面接だけでは解決できないものだと確信し、その対策を考案することが私たち研究者の課題でもあるのではないかと痛感した。
*パネルディスカッションで企業の方が「長く勤めてもらいたい」と何度もおっしゃっていたのが印象に残った。海外ではそのような価値観は一般的ではなく(よくも悪くも、企業が社員を縛らない)、だからこそ就職活動もスキル重視でシンプルなのだと思う。自分視点、企業視点を持つことと同時に、日本の独特の企業文化や雇用制度を理解してもらうこと、そのうえで日本で働きたいかどうかを考えさせることも重要ではないかと感じた。
*段階を上げていくときの工夫や具体的な言葉など、本当にすぐに役立つ情報が多かったと思う。活用させていただきたい。(支援側として)練習が必要だと思うので、勉強会などがあったらいいと思う。
* 現在私のクラスでは、「就職活動が終わったばかりの先輩」「就職して働き始めたばかりの先輩」「働き始めて3年目位になった先輩」などの講演を、クラスの中で短い時間ながら催すことにしている。これが現役の外国人学習者にとっては、「自分の未来を想像(創造)する瞬間」につながってくれたらと考えている。
*留学生に限らず、就活生すべてに共通すると思うが、自分視点の学生を大学教育によりどのように変えていくかという事が、これから重要になっていくと思った。
*2~3年働いて短期間で経験を積み評価を得たい学生と、時間をかけて育成し10年は働いてほしいと考える企業の考え方のギャップが埋まらないという点が興味深かった。また、アグレッシブな学生ほど早期退職になりやすいという点からも、採用側の苦労がよく理解できた。どちらの考え方も理解できるので簡単に譲歩できる問題ではなく、マッチさせるには時間がかかるのだろうと思う。このようなギャップを企業もしくは就職支援担当のはたらきかけや工夫で改善できた事例があれば共有していただきたい。高見澤さんの「少しだけひいき」という個別対応は、信頼関係があってこそできる対応なんだろうと思った。
*河野さんの「第0段階」のお話や「答えは一つではない、考えることに慣れるという指導」には非常に共感した。

ほかにも、多くのご意見・ご感想をいただきました。
ありがとうございました。
来年も7月ごろに研修会を予定しています。
またお会いしましょう!

(文責:株式会社ASIA Link 小野、井上)