会社説明会で留学生が本当に聞きたいこととは?~仕事内容について~

こんにちは!ASIA Linkの小野です。

私は仕事柄、様々な企業が開催する新卒採用向けの「会社説明会」に立ち会うことがあります。

その際は、なるべく留学生の視点に立ち、
*その企業のことをどれくらい理解できるか?
*その企業で働く自分の姿を(将来にわたって)イメージできるか?
という点を意識しながら聴くようにしています。

また、説明会に参加した留学生にも、
*説明会のどの部分が一番参考になったか?
*逆に、あまり理解できなかった点、説明が足りないと感じた点はあったか?
という質問をするようにしています。

その中で、やはり留学生が最も関心を持つのは、
*仕事内容に興味を持てるか
*仕事内容が 自分の知識・経験・強みを生かせる内容か
*自分が成長できると感じる仕事内容か
という点です。

多くの会社説明会に参加して思うことですが、学生にとって(これは留学生でも日本人学生でも 同じですが)、会社での仕事内容を理解するのは簡単ではありません。一度も会社で働いたことがない学生にとって、ビジネスの世界、会社組織の世界は未知の分野。
しかし、多くの会社説明会では、その企業のなりたちや理念、業界での位置づけや事業内容 (製品やサービスの詳細)についてたくさんの時間が割かれます。その一方で仕事内容については、 職種の紹介として職種名が並ぶ程度、という場合も少なくありません。
特に留学生の場合には、エンジニア系の職種ならともかく、それ以外の職種は日本独特の カテゴリーや名称もあり、理解が難しいのです。 自分がどんな仕事をするのか、自分のやりたい仕事ができるのか、よくわからないまま入社 するほど不安なことはありません。

大手有名企業で内定を得たにもかかわらず、ベンチャーや 中小企業へ就職を決める留学生に時々会いますが、理由を尋ねると
「某大手有名企業では、 自分がどのような仕事を任されるのか、どのような仕事に挑戦できるのか、まったく具体像が 見えなかった」
という答えが返ってきます。
そのような留学生ほど、目的意識をしっかり持った 優秀な学生であることが多いです。

仕事内容の説明については、ベンチャーや中小企業のほうが具体的でわかりやすいと、留学生はしばしば感じます。
■我が社は、今ASEANへのコンテンツ販売に力を入れている最中。ASEAN市場のマーケティング とASEANでのライセンス取得業務の部門で、ぜひ留学生を採用したい。
■中国での需要が高まっている浄化装置を中国市場向けに製造・販売していきたい。中国への 海外営業、中国での展示会参加、中国語でのHP・パンフレット・取扱説明書や契約書の作成をしてくれる留学生をぜひ採用したい。

留学生が仕事内容を重視する理由としては、人材採用の文化的な違いも背景としてあります。

日本以外の多くの国々は、職種採用です。○○エンジニア、営業職、マーケティング職のように 職種名で募集があり、採用の際にはその人材の知識・能力・経験がその仕事に合っているか どうかで採用が決まります。
人材側も、企業の業界から就職先を絞っていくというよりは、希望職種をしっかり定めて、 職種から応募先を絞ります。

一方、日本の場合はジョブローテーション形式を取っている企業が多く、数年単位で職種が 変わることもしばしばです。新卒の場合は特に、入社の段階で配属が決まっていないこともよくありますし、希望通りの配属にならない場合もあります。そのため必然的に、学生たちは「職種」ではなく「業界」から志望企業を絞ります。
採用側も、特定の職種に必要な知識やスキルを選考の場面では見ませんので、よく言われる 「ポテンシャル採用」となります。 上記のような背景からも、日本の企業の会社説明会が、仕事内容よりも企業理念や事業内容に重きを置く理由がわかります。
企業にとっては、どのような仕事に就いてもらうかが最重要ではなく、この会社の価値観や 理念にマッチした人材であるか、どの職種に配属になったとしも、会社自体への愛を持って 長く勤めることができるかどうか、が最重要だからです。

しかし、そうであっても、会社説明会では仕事内容について丁寧に説明し、理解を得る努力が 必要です。そうしないと、優秀な外国人材の取り込みに失敗するばかりでなく、日本人学生の 採用も難しくなってきます。
私は日本人の学生さんや若い社員さんと接する機会も多いのですが、
「会社説明会では、もっとシンプルに仕事の内容を説明してほしい」
という意見をよく聞きます。
最近の会社説明会では、「社会貢献」の話題が流行りで、この企業がどれだけ社会に貢献して いるか、どれだけ「やりがいと生きがい」を持って働けるかという、感動を喚起する構成に なっている場合が多いと。 その場では、自分も気持ちが高揚し、傍らでは感動で泣いている学生もいるのだが、後から 冷静に考えると何の仕事をするのかさっぱり記憶に残っていない、と言うのです。

仕事には、感動ももちろんありますが、実際にはつらいことも苦労もあるはず。 会社説明会では、キレイな話ばかりではなく、現実的な話も含めて本当のことを話してほしい、 と彼らは言います。 そのほうが、正直な会社だ、と信頼できると。

入社してから、
「思っていた仕事と実際の仕事が全然違った」
「評価されれば近い将来希望の職種につけると言われたが、それがいつなのか、どこが 評価基準なのか、先輩社員や上司を見ていてもよくわからない」
「説明会では高い志の話に感動したが、入社してみたら現場にその意識は浸透していなかった」
といった理由で早期に辞めていく若者は後をたちません。
これを、
「学生が入社前にもっと企業を調べるべきだった」
「まずは与えられた仕事で3年は耐えてみるべきだ」
「やりたい仕事がなければ自分で作ればいい」
「理念や感動だけで飯は食っていけない」
というのは簡単ですが、それでは、現実主義の性格が強い外国人留学生や、現実的な思考を持つ 今の日本人学生たちの気持ちと乖離してしまいます。

企業理念や社会貢献への意識は、仕事の結果として社会に体現され、還元されます。 様々な会社説明会で、企業理念・ポリシーが説明されますが、言葉にすると実際には どれも似たり寄ったりです。

重要なのは、社員一人一人がプロ意識を持って結果を出せるか。それを評価するのはお客様で あり社会です。その仕事がお金を生むなら、本来社会貢献にまったくつながらない仕事なんて 存在しないはずです。

企業は、自信を持って自社の仕事について語っていただきたいと思います。