面接で等身大の自分を見せることについて

こんにちは。ASIA Linkの小野です。

私たちASIA Linkでは、私を含めて3人のコンサルタントが日々留学生との就職面談を行っています。
面談スキル向上のため、先日3人で「面談勉強会」を行いました。

3人それぞれが、最近自分が担当した事例を持ち寄り、課題や改善について話し合いました。
私の事例は、ある理系大学の4年生の留学生Aさんとの面談でした。

このAさんとは今年の春に一度面談させていただいていましたが、機械工学が専門だが技術職には興味がなく、グローバルに活躍できる営業職を希望していました。それ自体はもちろん良いのですが、営業職であれば何でもよいと考えており、興味・意欲がある技術分野や製品はないとのことでした。
この状態だとASIA Linkからの企業紹介はすぐにはできないことを理由とともに伝えた上で、まずは自分で様々な企業説明会などに参加して、営業職の中でもどのような分野や製品・サービス、顧客等に自分の心が動くか、少しでも心が動いたら選考に進んでみるよう勧めました。
ASIA LinkのJOB FAIRや求人説明会にも参加していただきました。

8月に、再度Aさんから連絡がきました。
就職活動がうまくいっていないとのことでした。
私の担当で、再度面談を行いました。

今回の面談でも、やはり技術職ではなく営業職を希望しているとのことでしたので、春の面談と同じように、興味・意欲がある技術分野や製品、対象顧客などについて聞きました。「なぜ営業をやりたいのか?」も再度聞きました。

Aさんからは、よどみなく流れるように答えがスラスラと出てきました。
これまでの5か月間の就職活動で、何度も面接で言ったであろうと思われる、完成された文章が出てきます。
内容にも根拠がありますし、日本語もとても流暢です。

しかし、本心からではない。
「話を作っている感」が全面に出ている。
面接官の心にはまったく届かなかったでしょう。
Aさんの話を聞きながら、この5か月間ご本人が面接を通過できなかった理由がわかった気がしました。

Aさんに本心を語ってもらうために、ここから1時間、いっしょにいろいろな話をしました。
面談の後半、「Aさんは何のために働きたいのですか?働くための最大のモチベーションを一つあげるとしたら何ですか?」と聞きました。

「家族のためです」

面談の中で、初めてAさんの心から出た声でした。
母国で苦労している家族を助けたい。働き手は自分だけだ。
だから、できるだけ早く売上に貢献してステップアップして、収入も増やしていける営業職を希望している。
この言葉は、間違いなくAさんの本心だと、聞いていてわかりました。

Aさんはとてもまじめな努力家ですので、面接では面接官が納得するような理由を事前に時間をかけて考え、理論武装をして面接に挑んでいました。
しかし面接官からは、「あなたが何を売りたいのか、なぜ営業したいのかがわからない」と言われたことがあったそうです。
Aさんはこの面接官に対して、営業職として就職できればどんな商材でも学んで覚えていくし、どこへでも出張しますとアピールしたそうですが、面接は通過できなかったとのことでした。

Aさんは、面接官が本当に聞きたい「なぜあなたはそうしたいのか?」の問いに答えることができていませんでした。実際にはAさんの答えは明確で、「家族のため」なのですが、本人は面接でそれを言うのはタブーであると考えているのです。

Aさんがこの状況を乗り越えるためには、どうしたらよいのか。
私からは、「正直に等身大の自分、いまの自分を見せてはどうか?」と伝えました。
5か月間就職活動をがんばってきて、商材にも技術にも現時点で興味や意欲を語れるものがないなら、無理に理由を作ることは一旦やめてみる。そして、母国で苦労している家族を助けたいということを正直に話してみる。
「家族のためにがんばりたい。チャンスをもらえたら全力でやる」と。
Aさんの本心を聞いて、「Aさんならがんばれそうだ」「Aさんといっしょに働きたい」と思ってくれる面接官がどこかにいるかもしれない。

Aさんとの面談が終わったあと、私の中では自分の無力さのような気持ちと、仕事やキャリアについての考え方を改めて突き付けられたような気持ちの両方がありました。
私たちは人材紹介会社ですので、企業に紹介した留学生には、長く定着して活躍してほしいと考えています。そのためにも、留学生本人の仕事に対する軸や、キャリア志向を見極めようとします。
しかし、明日の糧が必要であったり、家族が仕送りを待っているような状況で、仕事の軸やらキャリア志向やらを問うことに何の意味があるのだろうか。
彼らは、明日の糧に困ったことがない私よりも仕事に対して真剣であり誠実かもしれない。
仕事の軸やキャリアを考えることは、当面のお金に余裕がある人たちだけのものでは?

面接勉強会では、このAさんの面談事例と、その時に感じた自分の気持ちをメンバーに共有して、話し合いました。

メンバーの一人から、こんな話が出ました。
キャリアコンサルタントの国家資格の勉強をしていたときに読んだことがある就活体験談に、今回の事例の参考になりそうなものがあったそうです。
ライターの求人に応募を続けていた方が、経験がないため面接で落ち続けていたそうです。あるとき、これまでの面接のように「あれができる、これができる」とアピールするのをやめて、「スタートラインに立たせてほしい」と等身大の自分の本心を伝えたところ、面接官の表情が変わったとのこと。その企業で就職が決まったという体験談でした。

そして、職業選択のときに、仕事の軸やキャリアについて考える人もいれば、そうでない人もいること。そして、そのどちらもが、本来上でも下でもないし、正解でも不正解でもない、ということも、メンバーで話し合いました。

私はこの仕事を始めて11年が経ち、これまで2,300人の留学生と面談をしました。
しかし、本当に面談は難しく、奥が深いです。
これからも勉強を続けて、自分の感性も知識もスキルも磨いていきたいと改めて心に誓いました。